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フリーライターの吐きだめ

YOUTH

朝帰りの日の電車がすきだ。正しく会社に向かう人達の流れを横目に自分のためだけに時が進んでいるような気持ちになる。お腹が空いて途中セブンの肉まんを買って頬張りながら家に帰る、メイクを落としきってベッドに倒れ込む。若さの消費は寿命の前借りでもあるらしいから、そんな日々よりも自分を大切にしなきゃいけないんだろうな。

昨日はお昼前に起きてお花見をしに中目黒へ向かった。平日にも関わらず駅前は人で溢れていて、改札を出る前に迷子になりそうな混雑ぶりだった。移動中に「中目黒 美味しいランチ」で検索するとオムライスがヒットして、わたしは完全にオムライスマインドに。

駅から3分程度、高架下をずっと歩いていくとお店を見つけた。雰囲気の良いそのお店は入ると奥行きがあって、テラス席は風が強くなければ気持ちいいだろうなと思った。

窓際の席に座ってオムライスが運ばれてくるのを待つ。葉っぱにビネガーが掛かったサラダ(はたしてサラダなのだろうか…)は酸っぱくて美味い。それから念願のオムライス、ネットでみた写真と明らかに違うものが運ばれてきて動揺が隠せない。

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小洒落たスプーンですくって食べるとさらに動揺が隠せない、待ってくれ、これは本当にオムライスなのか?仮にこの中目黒産のオムライスが真のオムライスなら、わたしが今まで口にしてきたオムライスは何だったのか。全てが濃いのに圧倒的に旨味が足りない、そして米が臭い。期待してただけに心が折れて瀕死マインド。

店を出てHP0になったわたし、やけ酒な気分になって向かいにあったワイン屋さんになだれ込む。ワインは体質的に無理なものが多くてリバースしがち、それでも最近ミディアムボディまでのものなら美味しいと思えるようになってきて色々と開拓していきたいところだ。店内は力の抜けたお洒落さがあってさすが中目黒だなとかミーハーなことを思ってしまう。ワイン初心者のわたしでも分かりやすいようなキャプション付きでワインに詳しくない男の子がお花見デート前に安心して身を預けられるような店だ。店内をぐるりと見て回っているとお勧めの赤ワインを試飲させてもらえることに、食前や食後にぴったりの甘みの強い赤。軽くてフルーティでナッツと一緒にパカパカ飲んじゃうやつだ。(そうして今までに何度も痛い目をみている)ワインでの悪酔いっぷりは自宅でお披露目することに、我が家には赤と白が1本ずつやってきた。

目黒川は高架下を少し歩いて横断歩道を渡ってしばらくすると見えてくる。今はシーズンだからたくさんの警備員がいて自然と誘導される感じになる。職場の警備の方々に見習っていただきたいほどの熱の入りっぷり、横断歩道を渡るだけなのになんかちょっと悪いことをしてる気になる。人の波に逆らわず行くのが吉。

目黒川の桜は見事に満開。風の強い日だったから花びらが舞い続けていたけど、まるで春の嵐の中にいるみたいでロマンチックだった。

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溢れる人、心なしか学生が多いような気がして世の学生はまだ春休みだったことに気づく。大学生の頃の春休みは旅行に時間を当てることが大半だったから都内で遊ぶ考え、わたしにはなかったからなんだか新鮮だ。そういえば海外旅行もしばらくしていない、独身の間にヨーロッパを巡って新婚旅行にモロッコへ行きたい。(前向きな野望)警備員が順路を叫んでいたけど、叫んでいることしか分からなくて人の流れに沿って歩いた。川沿いにはいくつもの出店が並んでいる。「あのチーズが伸びるやつ食べたいんだよね」とニコニコしながら話す人、500円のチーズハットグを即購入。砂糖とケチャップ、マスタード全部をたっぷりかけるのが美味しく食べるコツだ。新大久保で食べて以来、想像できる味と美味しさ。ハットグ初心者の彼が満足していたのでよかった。

目黒川は品川区を流れ、東京湾に注ぐ河川で二級水系の本流だ。古くは港として使われ、「品」の行き交っていた川であった。これが「品川」の起こりとされている。桜並木は川に沿っていて終わりが見えない。突き当たりまで行って折り返そうとしていたけど、大通りを挟んで続く川と同じように桜並木も続いていて思わず顔がほころんだ。折り返してからは、焼き鳥屋で焼き鳥2本と生ビールとハイボールを買った。炭火で焼く本気のやつで不味いわけがない。炭焼きの香りはずるい、うまいうまいと言いながらお酒を片手に焼き鳥を頬張るわたしたちも店の十分な宣伝材料で瞬く間に行列ができていた。午後3時、日が傾き始めている。日に照らされた桜は本当に綺麗で桜のある国に生きていてよかったと思った。

駅前は相変わらず人で溢れている。そうか、夜桜だ。桜並木に沿って吊り下げられた蛍光ピンクの提灯は昼間は邪魔だった。けど、夜を想像すると納得できた。来年は夜桜が見れたらいいな。お花見の後はどこかで作業するつもりだったけど、随分くたびれてしまって家へ帰ることにした。途中銀座に寄ったけど相変わらず銀座は苦手だ。思い出したくない気持ちが詰まっている、呼吸がしづらくなる。救ってあげられなかったあの頃のわたしがこっちを見ている。帰りの電車でふと京都にいた頃のことを思い出した。わたしが小学生の頃から高校を卒業するまで通学路として12年間歩いた道は桜並木で有名な「哲学の道」と言うところで、近くに銀閣寺や永観堂、法然院と観光どころが多いから春や秋の桜と紅葉シーズンは人で溢れかえる。今の時期なんかは昼間はとてもじゃないけど歩けやしない。だからわたしたちが出掛けるのは夜、家族みんなで犬の散歩がてら夜桜を見に出掛ける。その日は父もはやくに帰ってきて、わたしたち姉妹は両親がふたり並んで歩いているのをふり返って見ながら歩くのが好きだった。途中、アイスクリームの自販機でハーゲンダッツを買ってもらったりして、それのせいか何となくわたしの中のお花見は夜桜だった。

最寄駅について直帰するか作業するか、迷いつつも疲労の勝利。というか身体に力が入らない、完全に燃料切れだ。(そういえばランチのめちゃくちゃ不味いオムライスから1日まともに食べていなかったことに気付く)「作業やめて寿司にしよう」という最高な提案に食い気味で頷く。家とは逆方向へ、駅から5分かからず到着した寿司屋は以前から気になっていた場所だ。午後6時過ぎ、店内にはすでにお客さんがいる。ネタに悩んでいると「刺身から見繕いましょうか」と声掛けしてもらってその通りに。鮪と鯛と赤貝、ほたるいかと酢味噌がやってきてため息が溢れる。その後もネギと鮪とネギマが続いて、とにかく最高だった。特に最高だったのはほっき貝の握り、大将が最後にビタンと貝を叩くとくるんと反り返る新鮮さだ。大きめのネタはどれも全く臭みがなくて、ランチのあれが完全にどこかにいってしまう美味しさ。生きててよかった、食べるって最高。

大大大満足で家路へ、最高の休みだったよねとふたりで自画自賛しながらまた寿司を褒めた。並んで帰りながら、「琥珀色の朝、上海蟹の朝」を思わず口ずさみそうになった。そういえばわたしのイメージといえばこの曲らしくてくるり好きなわたしからすると何だか嬉しい。思い出には音楽が付属していく感覚、時に厄介だけど音楽のない生活なんて考えられない。(どんまい、がんばれ、瀧)朝から夜まで風のよく吹く日、生暖かい夜風がわたしたちに春を知らせてる。