war

フリーライターの吐きだめ

潜熱

4月30日、天気は雨で肌寒い日だった。春の薄手のニットの上から冬のウールのコートを羽織って出勤、サービス業の私にはGWなんて全くの無関係でむしろいい迷惑だ。稼ぎ時といえば聞こえは多少いいかもしれないけど、最低限のスタッフ数にも関わらず、連休だからと増えた客数をさばいていくのは辛いものがある。絶賛5連勤中の私は一昨日から体調が絶不調で顔面蒼白のまま店頭に立ったりしていた。

平成最後の通勤電車は座席にはまあ座れるくらいの混雑ぶりで、途中の主要駅からはどっと人が乗車してきていつもみたいだった。それでもなんとなく街に漂う年の瀬感、止めることのできない時間を名残惜しみながら、多くの人が今までを振り返りながら前を向いている空気感がわたしはすきだ。そうだ、今日で平成が終わる。

平成はどうだったかと聞かれても人生だったとしか言いようがない。私の人生そのものが、ひとつの区切りを付けて終わり、そしてこれからまた始まる。

退勤後は家の近くのスタンディング食堂で夕食をとる事にした。最寄りに着くと私を待つ人が見えたから少しだけ立ち止まって私を待つ姿をみていた。初めてのデートの時みたいによく分かる場所で、わたしが見つけやすい場所に立つ姿は相変わらずだ。ただいまと近付くと少し驚いておかえりと笑うこの人とも平成最後の冬に出会ったんだ。

家から徒歩2分の距離にあるスタンディング食堂は何を食べても美味しいし、価格帯も良心的だ。ジントニックを飲みながらの最後の晩餐、テレビでは平成最後と何度も繰り返すアナウンサー。今までを振り返っての特集は気付けば見入ってしまう、中居くんも歳をとった。令和も何卒よろしくお願いしますと言い合いながらお腹いっぱい食べた。渡り蟹のトマトクリームパスタがものすごく美味しかった。

そして私は明日またひとつ歳をとる。23歳はよく遊び、よく働いた。色んな人に出会ったし、色んな人の悪意も優しさも受けた。思い出すと辛くなることもあるけど、嬉しくて泣きだしそうになることもある。少しだけ逞しくなった気がする。

わたしの人生と、みんなの時代がこれから始まる。責任と柔軟性を持って、楽しんで生きていきたいな。

 

 Bara No Hana (Flower of Roses)

Bara No Hana (Flower of Roses)

  • Quruli
  • Alternative
  • USD 1.29
  • provided courtesy of iTunes