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フリーライターの吐きだめ

与える

「言えたことだけが気持ちなんですよ」あるドラマのワンシーンでの台詞。頭殴られたときみたいな衝撃があったというか、頭殴られたことないけど。目から鱗みたいにハッとさせられたというか、目から鱗とれたことないけど。巻き戻したりなんかは別にせず、それでも反芻するその台詞をスルメイカみたいに何度も何度も味わう。どれだけ思っていても言葉にして、ちゃんと伝えたい人に伝えられないとそれは気持ちじゃない。やけに落ち込みがちな今日、理由はなんとなく分かってる。たくさんストーリーを上げた旅行先の夜だってひとりベッドに寝転がりながら声を出さずに泣いた。端的にいうと私はきっとずっと寂しい。家事もできる、料理もできる、金銭的にも自立してる、わたしのことを好いてくれる人もいる、世間的にはひとりで生きていけるこの状況を幸せだと思いながらもどうしたって寂しい。リビングで「寂しい」と声に出してみてまた泣いた。もしもこのまま誰のことも本当の意味で愛せない人生だとしたらこんなに虚しいことはない。誘われる、追いかけられる、愛される、受け身で居られるためのハウツーが溢れる世の中だけど、正直なところ26年生きていたらその類の処世術は大体身に付く。だけど、そういうことじゃない。全然違う。冷房の温度を少し低くしてお風呂上がりに快適に過ごせるようにしてあげようとか、醤油と塩とどっちも付けられるように薬味皿を多めに出したりとか、自宅に着いたけど話のキリが良くなるところまで散歩してみようとか、これすらも愛なのかは分からないけど。ただひたすらに相手の幸せや無事を祈ったりとか。そういう私がまだ知らないことをみんなきちんとやっていてすごいなと思う。どうしたらちゃんと愛せるんだろうな、どうやって生きていけばいいんだろう。どうしよう、わたしずっと寂しい。