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フリーライターの吐きだめ

蛇の目

ポイ捨てしたくなった。綺麗に塗装された壁、ならされた土が香るテニスコート、艶をまとった枯れかけの紫陽花も、何もかもが疎ましくて、わたしは精一杯胸を張って歩く。ポイ捨てして少しでも汚してやりたい。何もかもが喧嘩を売りつけてくるようなそんな気分。

年に一度とは言わないけど、半月に一度はこんな風にどうしようもなくなるフェーズがある。自分に、周りに、人生に、何もかもに煩わしさを感じて吐きそうになる。社会不適合と言われればそれまでで、帰宅後ソッコーで発泡酒を開ける。散々飲んで帰ってきたばかりにいれこむアルコールは味なんてほとんど分からない。

週末、外で飲み歩く人は思いの外に多くて深夜0時を超えても街は明るい。待ち合わせで出会う人は美容室で仲良くなったピンク髪のお姉さんとそのほか友達。

メガハイを頼んだわたしはさぞかし可愛くなかったろうけど、それで良かった。結露して垂れる水を隣からそっとぬぐってくれたシティボーイは忠実な犬みたい。今は先の無い優しさに浸りたいし。

二軒目はモヒートを飲みに少し歩いた。酔いたい時に限って酔えないし、会いたい時に限って会えないよなとか、しょうもないことばっかり考えてしまう。名残惜しそうな手を振り解いて歩き出すのは自分のため。絡みつく全部を洗い流したかった。

ここは豊かな土地だ。水も緑も何もかも揃ってるし、優しい人ばかりで、何ひとつ不自由はない。「足る」を知ったあの夜が遠のいて、自分の浅ましさに情けなくなる。

大丈夫だと言い聞かせば言い聞かせるほど、中身がスカスカになっていくようで、怖い。もしかして、ただひたすらに寂しいだけかもしれないけど、それでもこんな日もあるよな。

バルコニーで焚いた蚊取り線香は中々消えない。まあいいや、きっとすぐに忘れて歩き出せるだろうし。