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フリーライターの吐きだめ

似たような

雷門から歩いて大体10分、赤提灯が並ぶひらけた通りが通称ホッピー通りといわれる場所。平日にもかかわらず、お客は外に溢れかえっていて賑やかだ。

久しぶりの再会、テンプレートみたいな会話をしてからとりあえず生をふたつ。軽く歩いただけで、汗ばむ6月下旬。湿度の高い夜は嫌いじゃない。

適当に注文をいれて、少し話しては黙ってを繰り返す。なんとなく居心地が悪くて、壁掛けされたテレビに映る面白くもない番組を観るフリをする。

「あれ、うまそー」「そうでもなくない?」「そうでもないな」

とか言いながら、汗をかいたジョッキを撫でる。ずっと変わらない関係と、相変わらずの鏡写しで、気を抜くとダメになりそう。

「ふつうに連絡返してくれてよかった」「ふつうに連絡してくれてよかった」届いた焼き鳥を口に運びながら、言葉にする。喉に刺さったままの魚の骨が取れたような感覚、もう会えないかと思ってた。

恋人でも友人でもないこの関係は、戦友とか同士とかに近い関係だと思う。「煙草いる?」「いま吸ってないからいいや」「嘘ばっかり」そう言われて半ば強引に喫煙。アメスピ吸うやつにロクなやついないよな。

「飲む?」「どうしよかな」空いたグラスを指されて気付く。「行きたいところあんだよね」そう言いながらすでに腰を上げてるから、つくづく勝手で、つくづく私に似てると思う。

通りから離れるほど人は少なくなって、虫の声がきこえる。「ちょっと歩くよ」「いいよ」夜の街を歩くのはすきだ。風が少し冷たくなって、熱い頬に気持ちいい。

到着したのはお洒落な立ち飲み屋で、店の中は満員御礼。奥のカウンターにて、泡盛で乾杯。これが結構きつくて、いっきに酔いが回る。

外国土産の定番マグネットがコルクボードにずらっと並んでる。「イタリアは?」「ないな」「シンガポールは?」「あるよ」「マカオは?」「ないなあ」「マカオ行こうよ」「行かないよ」現地集合でとか笑ってんなよ。泡盛で完全にやさぐれモード。

帰り道、大きな交差点で新宿を思い出す。「あの日のこと、ずっと覚えてる」「めっちゃ走ったよね」「あんな走ることないよ」手を引かれて走ったあの日もこんな気温だったけな。