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フリーライターの吐きだめ

最後の夜

「孤独を感じたことがある?」駅前の信号待ちで尋ねられた。突然どうしたのよとわたしは笑うしかなくて困ってしまった。尋ねてきた友人の顔つきは真剣で、アスファルトはいつの間にか雨で濡れてた。

刺し盛りを頼んでおきながら甘いサワーを頼む友人、正気か?やる気のない店員さんが運んできたサワーは案の定わたしの前に置かれる。少し前に好きな人の友人に会ったときに、あなたはデザートが好きそうな顔をしてるねと言われたのを思い出す。そういう表現をされたことがなかったからなんだかすごく新鮮だった。

その日の友人はわたしに自分のことを伝えるために学生時代に後輩や友人から貰ったアルバムや寄せ書きを持ってきていた。緊張するといいながらサワーを流し込む彼をみて戸惑う。なんなんだこの時間、なんなんだこの関係性は。わたしに向けられたはずの気持ちの中に彼自身の自己愛が透け過ぎて心がひやっとした。

その日の帰りはすきな人にも会えなくて、感情の整理もつかなくてなんだか酷く疲れてしまった。久しぶりにひどい夜だった、本当に。

その翌日には、また責め立てられる夜がきて、どうして変わってしまったのと嘆かれたりした。長い間話し続けて気付けば声が枯れていた、水槽の水は捨てきらないと汚れたままだ。

情緒が安定したのと同時に生理がおわって納得、なるほど、ホルモンには勝てない。

昨日は無印良品で働いていた時の先輩から連絡がきて、渋谷のジャズバーへ繰り出した。先輩とは無印良品時代に町田商店をよくいっしょに食べて帰った仲。先輩は男運が本当になくて、いつも都合のいい女になってしまうのだそう。可哀想ですと笑うと殺すぞと言いながら抱きついてきておかしかった。相変わらずわたし達は「丁寧な生活」からはかけ離れてるけど、2人で歩く渋谷の街はまるで知らない街みたいで、これから何にでもなれるような気がした。