war

フリーライターの吐きだめ

忘れられないの

生肉に刃を突き立てたときの柔らかく不快な感覚だった。生温い風が吹いた気がして、私はまだまだ子供だと思った。

人の優しさや温度が煩わしい時間があって、それは所謂ひとりになりたい時間に匹敵するものかもしれない。ひとりを大切にできる人は魅力的だけれど、ひとりよりふたりの時間を楽しめる人生はもっと魅力的だ。特に後者は望んで手に入るものではないから、かなりの幸運がわたしに味方していると思う。

昨夜は落ち込みっぱなしの(わたしが落ち込ませた)人と最寄りの串カツ田中へ行った。串カツ全品100円かハイボール100円か、どちらか選べるキャンペーン中でわたしたちは前者を選んだ。エビが食べ放題だ。

店内のテレビには「世界の果てまで行ってQ」がかかっていて懐かしい気持ちになった。今の自宅にはテレビを置いていないから、こうして出掛け先にあるテレビを観るとついつい見入ってしまう。

絶賛落ち込み中のその人は店から出た後も元気がないままだった。夜風に髪がなびいて、串カツ田中の油の匂いがした。気持ちが湿気って、身体がだるかった。

職場では大好きだった先輩が退職してしまった。彼女は痛みをよく知っていて、決してふたつの痛みを比べない人だった。おすすめの化粧品をよく教えてくれて、すぐに死ねとか言う口の悪い優しい先輩だった。「ここ辞めたら、転職先紹介するよ」と笑う先輩は最後まで先輩らしかった。

7月、梅雨が明けない今の時期は必要な時期だけれど、気が滅入る。どうしても鬱々としてしまうから困ってしまう。才能のある人や、結果を出した人を恨めしく思ったりとか、そんな無駄な気の消費をして自己嫌悪になったり。

明日のことなんて考えずにサイゼリアで朝までおしゃべりしていたい。