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フリーライターの吐きだめ

ざらめ

京都の実家へ帰省してきた。東京駅から京都駅までは新幹線で片道約2時間半、夜行バスだと約6時間くらいかかる。私の実家は山の方にあって、猿や猪や狸なんかが平気で道を歩いてたりする。春先は梅の香りがして、冬の今は朝露に濡れた椿が強く咲いている。

名古屋を過ぎた頃「迎えにいくよ、何時頃に着くの?」と母からの連絡がきて8時前には着くよと返信。どれだけ遅くなっても駅前まで迎えにきてくれるのは母の愛だなと思う。

京都に着いて八条口のエスカレーターを降りると改札が見える。長い間会ってなかったから少しだけ緊張した。家族だけど、家族だって血の通った他人だ。

改札を抜けると真っ直ぐ先に母と妹が立ってるのが見えて私は2人に走って飛び込む。おかえりと笑う2人は私を強く抱きしめ返してくれて、私も笑ってただいまと答えた。

車の運転は父がしてきたようで、車の停まるところまで歩いていくと車から父が降りてきたから父にも思いきり飛び込んだ。その勢いで身体を持ち上げられてくるっと1回転、父は若い。なんだこれ、彼氏にもされたことないぞ。

それから車に乗って父方の祖母を迎えに行った。祖母には帰ることを伝えてなくて、サプライズでインターホンを押したら目が飛び出るんじゃないかと思うくらい驚いていておかしかった。心臓とまるかと思ったわと笑う祖母、身体は小さいのにどこにそんな力があるのかと不思議に思うほど強く抱きしめられた。

夜は私の好きなすき焼きをみんなで食べた。大きなお肉を丁寧に焼いていちばんにお皿に取り分けてくれる父。美味いやろと豪快に笑う父につられて思わず笑ってしまう。両親にとって私はいつまでも子供なんだろうな。心配や迷惑をこれからもかけると思うけどと話すと親にはいくらでも心配も迷惑もかけていいの、親なんだから面倒みさせてと話す母は少しだけ酔っていた。

私の家族は生まれも育ちも京都で周りとの結びつきが強い、それが窮屈に感じることも多くてうんざりしていた時期もあったけど帰省の度に、私が居ない間にも私を気にかけてくれている人たちの話を聞いて有り難いなと思う。家族でよく行っていたラーメン屋のおじさんは、3人で行くたびに「お姉ちゃんは元気にしてますか」と声をかけてくれるそう。話したことなんてあまりないのになと思っていたら「お姉さん、いつも美味しい美味しい言いながら食べてくれますからうれしくて」と、父と母に話していたらしい。そんな些細ことでも誰かの喜びになっているなんて、うれしい。ラーメン食べたい。

いつもは22時には寝てしまう父を含めて日付が変わる頃まで家族でいろんな話をした。幼い頃に10円ハゲができちゃったこととか、よく父の布団に潜り込んで寝てたこととか、妹が泣いたときは家までおんぶして歩いて帰ったこととか、そんなことあったのって初耳なことばかりで驚いた。若くてお金もなくて大変だっただろうに、わたしは溢れるほどの愛情を注いでもらったんだな。2人の子で良かった。

日付が変わって真夜中の2時頃まで妹とふたりだけで話もした。妹とは5つ離れているから喧嘩もしたことがなくて母の言うことは聞かなくても私の言うことなら聞くような舎弟のような関係。この春に大学生になる妹とはようやく話す目線が近くなった。彼女はものすごく優しい子で私よりもしっかりしてるから心配はないけど、いつでも力になれる存在でいたい。

帰りの車では寂しがりやの父が「ほんまに帰るんか」と何度も言うから母と妹が呆れながらなだめていて、私はそれが心地よかった。

私の姿が見えなくなるまで手を振り続ける家族に手を大きく振り返しながら私は東京行きの新幹線に乗り込む。「身体に気をつけるんやで」と最後の最後まで声を掛けられて、少しだけ泣きそうになった。

もう少し東京でがんばってみます。

Tokyo

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