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フリーライターの吐きだめ

離ればなれ

何かを好きで居続けられる人はすごい。小さな頃はよく食べたフレンチトーストも、何度も練習した一輪車も、いつかは結婚すると思ってたあの人のことも今じゃもう別に好きじゃなくなってしまった。フレンチトーストは胃がもたれるし、一輪車なんて何年乗ってないんだろう。好きだったあの人のことはSNSで何となく元気にしてることを知ったり知らなかったりする程度だ。それでも私はちゃんと全部すきだった。好きで居続けることが正義だから、正解だから、変わらないことが良しとされる世の中はわりと生き辛い。早朝、まだ誰も居ない体育館で鳴るバッシュの音も、はぐれないように夏祭りでしっかりと握ってくれたお婆ちゃんの手の温もりも、ずぶ濡れになりながら観た京都のバンドの演奏も、いつかは全部忘れてしまうのだろうか。人で溢れる夜の渋谷、ひとりで部屋にいると何故か優しい気持ちになれる。人は孤独、他人との線引きに厳しいこの街は自分という輪郭が濃く感じられる。

やさしさの距離

午前九時過ぎ、前日に午前指定にしたダイソンが届くインターホンで目が覚めた。念願の掃除機、なんだかんだでずっと買えてなくて、そうこうしてるうちに新作が出て、どうせならとその新作を買ってしまった。家電は長く使うことになるから日割り計算で正気を保つ。黙々と梱包を捌いて組み立て始める私に、やたらと構って構っての夫。私がいま何をしてるか見えないのか、初めのほうこそ適当にあしらっていたけれど段々と苛立ってきて私の口調も荒くなる。そんな言い方ないじゃないと落ち込む姿まで鬱陶しい。何を言ってんだよ、ふざけんなよと思わず口から飛び出しそうになる言葉を飲み込んで聞こえないように深呼吸をする。私たちは月の殆どをいっしょに過ごさないけれど、それでも福岡に帰ってきたときに纏わりつかれるのが最近は本当につらい。ひとりの時間が好きだし、まほちゃんまほちゃんと何度も呼ばれるのは気が休まらない。私もストレスが溜まっていた。おそらく決定的に彼を傷付けるひと言を放った直後、お得意のダンマリを決め込む夫に今度はしっかりと聞こえるようにため息をつく。もう好きにすればいいと思った。こうなったら彼は自分の悲しみに浸ることしかしないし、その間に私にしたことに関してはどうでもいいと思っていて、側にいるだけで疲弊していくから私はなるべく家を離れる。その日ようやく腑に落ちたのは彼が引きこもりタイプのエネルギーバンパイアということだ。

それからシーシャ屋の手伝いに出掛けて軽く研修を受けた。以前から好きだったシーシャを本格的に学ぶため、水面下で動いてきたことがいよいよ見え始めた。関西出身の店長と前立腺を開発されたい社員とPCに疎いエリアマネージャー。取り急ぎシーシャの作り方となぜかPCの修理を任される。初期化したら困りますよねえなんて話しながらなんとかPC復活。前職の経験が活きて良かったとおもった瞬間。お疲れさまですと外に出ると夕暮れにも関わらず蒸した空気に思わず眉間に皺が寄る。一旦、帰宅して予定通り飲みに出かける。二つ上、女の子が沼りそうな優しさと強引さを持ち合わせる某転職サイトの採用担当。まほちゃん好きだと思うんだよねと連れてこられたのは天神から少し離れた清川という場所の赤提灯居酒屋。お通しにきゅうりの一本漬けが出てくるようなところで、キンキンに冷えたビールを流し込むと夏の味がした。乾杯の後、半分ほどになったビールを見て嬉しそうに笑う彼とは付かず離れずの距離感が心地いい。翌朝、昼間から会いたい、昼間からちゃんとデートしようと言われて本当は暑いし面倒だと思ったけどそれは言わなかった。帰り道は土砂降りで、返しに来れるから借りるねと言って借りた傘はビニール傘なのに随分と年季が入っていて、意外と物持ちいいタイプなんだなと思った。

帰宅後は拗ね切った夫のアフターケアをして空港に送り出す。随分と心を摩耗したからか、仮眠して立ち上がろうとしたら脚に力が入らず思いっ切り転んだ。そんな経験なくて怖くて調べたら明らかにストレス性っぽくて、挫いた左足首を引き摺りながら駆け込んだトイレで吐いた。上がってくる胃酸を堪えながら溜まった連絡を返す。言葉100、行動100のパティシエ見習いの彼とようやく会える。彼を出迎えていつも通り過ごしていると優しく頬を撫でられた。少し痩せた?そう言って心配そうに覗き込む彼の優しさに何度も何度も甘えてしまう。何よりも私を優先してくれる彼は今のところ私の健やかなメンタル維持には欠かせない存在。

それから週末は仕事を終えたあと、久しぶりにフィジーカーの彼と居酒屋で待ち合わせをした。大会を控えた彼が今日の日のためにどれだけ節制したのかは分からないけど、彼の真っ直ぐで不器用な愛をなんとなくちゃんと受け取れるようになってきた。出会った頃から太陽のような人、気は効かないし、口は悪いし早食いだけど、それでもきちんと伝え合いたいと思えるような人。側にいると自分がきちんと女で、華奢な存在に思えるような人。当たり前のように埋まっていく一緒の先。去年の今頃は恋人じゃない彼とよく海へ行っていたけど、今年は恋人としてたくさん海へ行けるのが嬉しい。水着を披露したときのオーバーなリアクションが今年も見られる。

取り急ぎずらっと最近のことを吐き出してみた。予定を詰め込んでしまうのもあまり良くないんだろうけど、動いてないと息詰まってしまいそうな日々が続いていた。大勢の人が行き交う中で色濃く他人との線引きをしている東京でなら今の私はきっと息ができる。はやくひとりになりたい。はやく夏に飛び込みたい。

有り余る空想

私のために冷やされた部屋、彼の居なくなった部屋のベッドから今朝も中々動かないでいる。出勤時間が少し遅くなった彼の朝はそれでも早くて、今日は朝から一日久留米に閉じ込められるそうだ。きちんと朝食を作ってお弁当を用意して食器を洗ってゴミをまとめて、ベッドに居る私には目も暮れずにしっかりと暮らしをしている彼はこの先きっと私が側から居なくなっても通常運転で生きていくんだろう。きっと取るに足らないような存在、居たら楽しいけど居なくなったとしてもそれはそれでって感じな気がする。正直なところ、昨夜は彼と別れるかもしれないなと思って彼の仕事が終わるのを待っていた。お祝いしようなんて言いながらケーキを持って街中をブラブラと歩く。久しぶりなんて有りがちなナンパも大して耳に入らず、執拗に付いてくるのを避けきれず歩いていると向かいから彼が登場して驚いた。ドラマっぽいなあとか思いながら久しぶりの再会。彼の家でケーキを食べながら初めて聞かされた話を噛み砕く。相談しようと思ってたと話す彼の様子はどうやら嘘ではなさそうで、別れを切り出されると考えていたという彼の言葉もどうやら本当っぽかった。別れたくない、でもこれ以上関係性を悪くしたくない、そして何より我慢させてるって分かってるのに自分のしたいことを優先したいと、彼の言い分はそんなところだった。麻帆はどう思ってるの、そう聞かれて覚悟していたはずなのに上手く言葉が出ない。別れたいとは思ってない、絞り出した言葉に分かりやすく安堵する彼の顔をみて思わず笑ってしまった。わたしはあなたのしたいことを応援するよなんて物分かりの良い彼女をしながら本音と他の私に蓋をする。また二ヶ月、ろくにデートも出来ずセックスも出来ない日々が始まる。指先のネイルには気付いても、くびれが深くなったことに気付けない人のことを手放せないのは執着心なのか、それとも本当に好きだからだと思って良いのか。彼以外の彼とするデートとセックスを彼と同じように楽しめばいい、そうすればきっと上手くやれる。何事もバランスとタイミング、ほんの少しの我儘と多めの素直さが大人をやっていく上では欠かせない。酒だけが入った空っぽの胃がキリキリと痛む。そういえば昨日のお昼から何も食べてなかった。なんか意外と参ってるのかもな。

夜明け前

とくに書きたいこともないなと思って、それをツイートしようかと思って、でもやめて久しぶりにはてなブログにきた。明日から天気が崩れるみたいだからとベランダに干したベッドシーツを取り込んで、新調したエアリズムのシーツを掛ける。この前の感謝祭で手に入れたグレー色のリネンたちは想像よりもずっと高級感があって化学繊維独特の肌触りを除いてまあまあ気に入った。ついでに取り込んだ洗濯物をクローゼットに戻そうとした時、ラインの不在着信に気付く。掛け直すと思っていたよりも元気な声が聞こえてひとまず安心、もっと参ってるかと思ってた。連絡くれないから俺からしちゃったよなんて言われても以前よりも浮き足立たない。ちゃんと考えてたけど連絡してなかったんだよなんて応えながら、距離感ってやっぱり程々が良いなと思う。私からの連絡がいちばん嬉しいなんてそんなこと言うキャラだっけ、余裕が出てきたから言えるんだろうな、そうじゃなきゃこの人は自分が何より大事だもんな。荒んでる訳じゃない、ただ少し冷めてその人のことがよく分かるだけ。言葉と行動とで溢れるほど愛でてくれるあの人とも、夜更けにならないと本音を話せないあの人とも、ただひたすらに見守って味方でいてくれるあの人とも仲良くいよう。ああ、昨夜の花火がもう随分と昔のことみたいに感じてしまう。湿度が高くて潮の香りが随分と濃かった。少し湿気った手持ち花火、嬉しそうにわたしの写真を撮るその人のことを思い出すと胸が締め付けられる。去年の秋、店頭で花火を見なくなった頃くらいか、冬に花火がしたいと話す私に、じゃあ冬に花火しようよと笑ってくれたのもその人だった。令和三年、時代は移り変われども大事な人がひとりじゃなきゃいけないのは今のところ決定事項らしくて、社会不適合者の私からするとなかなか難しいことを言いますねという感じ。結局のところ、自分がどうしたいのか分からないし、愛される覚悟も足りません。

消毒

これ以上自分のことを嫌いになりたくない、そんな思いで電話したんだと10分ばかりの会話を終えて、暫く当てもなく夜道を歩いたあとに気付いた。せめて、もっと自分をすきになりたいとか、そういう洋楽のイケてる女の子みたいな強い気持ちでいられたらと思ったけど、そういう子たちだって毎日そんな風に強くは居られないはずだろうし、自分で自分を許す日がないと健やかにはやっていけない。まだ筋疲労の残る身体に鞭を打ってジムへ行く、腹筋の縦筋をなぞって少し安心する。ここ一週間はついてなかった、週頭から些細なことで喧嘩したし、昨夜は面と向かって頭がおかしいと糾弾された。あーもうボロボロです、参りましたと白旗上げながら所謂私らしさを見殺しにする。だってもうこれ以上わたしはわたしを嫌いになりたくない。

目から鱗

今月で無事に26歳を迎えたけれど、何度お世話になったか数え切れないサイゼリヤで、本日、人生初めて気付いたことがある。わたしは他人の気持ちがよく分からない。この場合の他人は自分以外のことを指していて、それが親友であれ、家族であれ、恋人であれ、わたしには他人の気持ちがよく分からない。実際「わたしって人の気持ちが分からないんだよね」そう声に出した途端に、胸に支えていたものが何となくストンと収まるべきところに収まったような感覚があった。対面に座ってわたしの告白を聞く人は動じることなく当たり前のように「そうだと思うよ」と頷く。大盛りのペペロンチーノにオリーブオイルをかけながら「というよりも、あなたは言語化されたことについての理解はとことん出来るのに察することが苦手なんだと思う」と続ける。「察せよ文化の日本はきっと生きづらいと思うよ、あなた感性がほとんど外国人だから」あまりにも淡々と話すものだから、まるでこの人はわたしの説明書きを読んでるかのような気持ちになる。「普通わかるでしょう?」「言わなきゃ分からないの?」この類の言葉を今まで何度聞いてきたことか。幼い頃から疑問だったことのひとつに自分がされて嫌なことは他人にしないという教えがある。自分の常識が他人に当たり前に適応すると思ってる考え方が理解できなかった。その人にはその人だけの喜びや悲しみがあるはずだ。そういう思いが昔からあって、事あるごとに「どうして悲しいの?」「何をされるとつらいの?」そう聞いてきたけどほとんどの人は怪訝な顔をした後にそんなことも分からないのかと溜息をつく。つくづく普通って何だろうと思っていたから、正直言うと今日のわたしの気付きはわたし自身のかなり救うものになった。そもそも普通を強要してくる層の人たちはその普通が多くの人の優しさと甘えで成り立ってることに気付いてるのだろうか。いくつもの感情の犠牲の上で成り立つ普通を信じて疑わない人たちのことをわたしはこれからも恐れ続けていくと思う。普通は家族と仲が良くて、普通は異性と結婚して、普通は浮気は許されなくて、普通に次は何でしょうか。悲しかったね、辛かったね、幸せそうだね、いつも元気だねって表面で同調することは簡単かもしれないけど、わたしは本当に他人を理解したいから何度も何度も繰り返し聞いてしまうんだと思う。例えまたその質問の後にあの呆れ顔を差し出されるとしても。他に考えられるのは言語化できない人が実際は多いんだろうなという考え。日本人だからなのか分からないけど感情に脳を支配されて言葉にできない状態が出来上がる、そこにわたしが言語化してと追い討ちをかけるから、出来ないことに葉っぱをかけられて不機嫌になってる人も多いんじゃないかと思う。だからこの気付きも、考えも結局はまたひとつのわたしの傲慢な考え方だろうし、わがままだとも思う。他人に期待しない人生は楽だろうな、分かっていても期待し続けて生きていたいのが今のところわたしの人生。感覚で生きて、言葉できちんと残していきたいです。

新生姜

真夜中の三時、眠れなさに痺れを切らしてインスタント麺を作りに台所へ立つ。日頃から体調には気を付けているし、サプリを飲んだりジムへ行ったり健康意識は高い方だと思う。それに今までずっと我慢してきたし、今夜くらいはその誘惑に乗ったっていいじゃないの。誰に怒られる訳でもないし、とか開き直ってフライパンを引っ張り出した。深夜のラーメンのために深底の鍋で湯を沸かす気力なんて今の私にはない。超強火、袋の裏面を読むまでもない。全部大体でいいし、なんならちょっと濃いくらいがちょうど良かったりする。三分足らずで出来上がった湯気の上がるラーメンを無印のレンジでチンできる透明タッパーに入れる。皿代わり、洗いやすさピカイチのこれに限る。丁寧な暮らしとか今はちょっと分からないです。なんか雨の匂いすると思って窓を網戸を引いて外を見る。思ってたより空を白んでいて、雨は降ってなかったからせっかくだしと思って外でそれを食べる。よく噛みもぜず流し込むハイカロリーはこんなにも美味しいものか。罪なやつ。
昼の三時には閉まる角の魚屋にもう灯りがついてる。あれ、そんなに早くからやってたんだとか思って熱々をずるずる啜った。スープは嫌いだから飲まないけど、千切れた麺もしっかりかき集める。秒で作って秒で食べちゃったよ、どうしよう。とりあえず気持ち多めの水分摂取。あったかいラテをいれて、お気に入りのキャンドル焚いて、楽天市場で母の日ギフトを探す。あ〜、全部めんどくさ。ごめん、お母さん、大好き。
明日っていうか今日の予定、飲みにいく予定だったけど色々合ってそれもキャンセル。コナンくんの映画誘おうにも相手いないし、服買いたいけどいざ店行くと可愛いの見つけらんないし。あ、でもスナイデルのバケハ欲しいんだった。あ、でも土曜じゃん。詰んだ。そういえば物も人も断捨離しようと思って早速、美容院変えてみたけどかなり正解だったな。やっぱり直感って大事だよね、意外と一番まともな感覚なのかも。
とりあえず明け方までネットサーフィン、徘徊するとしてマストはお祝い返しと母の日ギフトとフィルム出しとあとなんだっけ、動画の文字起こしか。気分乗らなかったら服の断捨離しちゃお。
てか、この食欲、思えば薬の副作用なのかも。初めての口唇ヘルペスで激萎えだし、しかも原因、疲れらしくてそれもダサいよね。しっかり休息してくださいねってお医者さんに言われてたりします。多分、睡眠不足も関係してるよね。毎日セックスするしかないんかな。どうなんでしょうか、先生。ついでに聞きたい、愛とか恋とかってなんですか先生。あ〜、ひとり暮らししたい。ひとりで眠るのが好きすぎるんだもの。あと、男の人の体毛が落ちてるの個人的にキモくてやっぱ一生無理かも。度々スーモ開いてはウンウン唸っちゃう。とりあえず来週のBIMのライブまでは生きようっと。お疲れ、みんな。