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フリーライターの吐きだめ

有り余る空想

私のために冷やされた部屋、彼の居なくなった部屋のベッドから今朝も中々動かないでいる。出勤時間が少し遅くなった彼の朝はそれでも早くて、今日は朝から一日久留米に閉じ込められるそうだ。きちんと朝食を作ってお弁当を用意して食器を洗ってゴミをまとめて、ベッドに居る私には目も暮れずにしっかりと暮らしをしている彼はこの先きっと私が側から居なくなっても通常運転で生きていくんだろう。きっと取るに足らないような存在、居たら楽しいけど居なくなったとしてもそれはそれでって感じな気がする。正直なところ、昨夜は彼と別れるかもしれないなと思って彼の仕事が終わるのを待っていた。お祝いしようなんて言いながらケーキを持って街中をブラブラと歩く。久しぶりなんて有りがちなナンパも大して耳に入らず、執拗に付いてくるのを避けきれず歩いていると向かいから彼が登場して驚いた。ドラマっぽいなあとか思いながら久しぶりの再会。彼の家でケーキを食べながら初めて聞かされた話を噛み砕く。相談しようと思ってたと話す彼の様子はどうやら嘘ではなさそうで、別れを切り出されると考えていたという彼の言葉もどうやら本当っぽかった。別れたくない、でもこれ以上関係性を悪くしたくない、そして何より我慢させてるって分かってるのに自分のしたいことを優先したいと、彼の言い分はそんなところだった。麻帆はどう思ってるの、そう聞かれて覚悟していたはずなのに上手く言葉が出ない。別れたいとは思ってない、絞り出した言葉に分かりやすく安堵する彼の顔をみて思わず笑ってしまった。わたしはあなたのしたいことを応援するよなんて物分かりの良い彼女をしながら本音と他の私に蓋をする。また二ヶ月、ろくにデートも出来ずセックスも出来ない日々が始まる。指先のネイルには気付いても、くびれが深くなったことに気付けない人のことを手放せないのは執着心なのか、それとも本当に好きだからだと思って良いのか。彼以外の彼とするデートとセックスを彼と同じように楽しめばいい、そうすればきっと上手くやれる。何事もバランスとタイミング、ほんの少しの我儘と多めの素直さが大人をやっていく上では欠かせない。酒だけが入った空っぽの胃がキリキリと痛む。そういえば昨日のお昼から何も食べてなかった。なんか意外と参ってるのかもな。