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フリーライターの吐きだめ

離ればなれ

何かを好きで居続けられる人はすごい。小さな頃はよく食べたフレンチトーストも、何度も練習した一輪車も、いつかは結婚すると思ってたあの人のことも今じゃもう別に好きじゃなくなってしまった。フレンチトーストは胃がもたれるし、一輪車なんて何年乗ってないんだろう。好きだったあの人のことはSNSで何となく元気にしてることを知ったり知らなかったりする程度だ。それでも私はちゃんと全部すきだった。好きで居続けることが正義だから、正解だから、変わらないことが良しとされる世の中はわりと生き辛い。早朝、まだ誰も居ない体育館で鳴るバッシュの音も、はぐれないように夏祭りでしっかりと握ってくれたお婆ちゃんの手の温もりも、ずぶ濡れになりながら観た京都のバンドの演奏も、いつかは全部忘れてしまうのだろうか。人で溢れる夜の渋谷、ひとりで部屋にいると何故か優しい気持ちになれる。人は孤独、他人との線引きに厳しいこの街は自分という輪郭が濃く感じられる。