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フリーライターの吐きだめ

待ちぼうけ

本当のことを言ってしまえば、幾らか楽になるんだろうか。本音で渡り合えば、幾らか心が晴れるのだろうか。今日はクリスマスで、いつもより浮かれた街並みが美しい。平日とは言え、学生の多くは街に出ているのか家族連れも多い天神の昼下がり。私はひとり、ホテルのカフェラウンジでホットのロイヤルミルクティーを飲んでケーキを買いに並びに行った彼の帰りを待っている。ずっと来たかったホテルメイは流行りのちょっとお洒落なホテルで、フルーツサンドが有名。27日まで期間限定のコーヒークリームとあまおうのサンドを食べたけど、想像通りの味だった。こんな風に書いていると賑やかな今日の日にものすごく荒んだ女みたいで嫌だ。左腕には昨夜プレゼントにと貰ったアニエスの時計がひかる。ゴールドのバンドと滑らかで上品なブラウンの文字盤が可愛い。物に罪は無いからきっとこの先、ペアを持つ彼と別れたとしても大切に使おう。

店内に流れる柔らかなクリスマスソング、なんとなく心に感じる違和感を無視してしまっていいんだろうか。「メリークリスマス」と連絡をよこした彼のことが頭の隅から離れないのはどうしてだろう。彼から貰った薔薇とモミの木の香りが忘れられないからか。いずれにせよ交わらない点と点であることを、私は私に言い聞かせている。手首からはあの青々しい甘さと温かい樹皮の清らかな香り。どうか私だけ特別扱いしないで。そんな願いをクリスマスにしてる女は私くらいかもしれない。

これから家に帰ってチープなピザとシードルで乾杯でもする予定。いちいち鼻につく相槌を受け流して、身体の相性に甘んじて夜を越えて、日々を飲み込む。いい加減に顔見知りが多くなり過ぎていて、もう気ままに遊んだりは出来なくなってきた。凍てつく冬の海風、耳も鼻も唇も冷え切って目からは涙が出る夜明け前の空気。家の裏手にある港を歩いて、引き潮の海を眺めてるとささくれ立った心にゆるやかな水面が広がる。高速のひかりが際立って、凪の海に輝くのを私だけが知ってる。そんなささやかなうつくしさを誰かに伝えたいと思う日が、私にも来るんだろうか。