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フリーライターの吐きだめ

背中の痛み

挙式まで一ヶ月を切った。粛々と準備をしながらも両家の質問の窓口になった私のラインはいつもより通知が多い。世間は未だコロナ、コロナとうるさいし、関東は緊急事態宣言が延長された。もう勘弁してくれよと思いながらも、夜の上野を歩いてると土曜の夜らしい賑いで清々しいほどの矛盾を見た。喫煙所に植った桜の花がもう咲いてる。そんなに暖かかった記憶もないけれど、酔いの入った大人たちが満開の桜を仰いでいる姿は青さがあっていい。

会いたかった友人たちとは予定が合わず、今回はあまり会えなかった。こういう瞬間に東京で暮らしていないことを実感する。じゃあ来週で、なんて約束が気軽にできない。性欲はあるのに、いざセックスする気力はない。なんだか全てに気乗りしなくて気付けば書店でいくつも本を買ってしまっていた。キャリーで来たとはいえ、後悔するぞとかなんとかひと言欲しかったけど誰にも止められなかったので大人の贅沢を。隅田川沿い、雨降りの東京は想像以上に寒かったから部屋にこもって本を読むのに適していた。

時刻は深夜二時、何となく二十代について考える。何でも出来ると思っていた訳じゃない、だけど何でもしてみたいと思って過ごしてた。故郷以外の場所で生きるのは思っていたよりもずっと孤独だった。一日中セックスしたり、酔い潰れてガスコンロに吐いたり、突然耳が聞こえなくなったりした。自分のご機嫌をとるのが、他人との距離感を掴むのが上手くなった。脆くなったし、大胆になったし、言えないことも多くなったし、貪欲にもなった。それから、それを隠せるようになった。

共に生きていく人を選んだ二十五歳、これで良かったのか、これが良かったのか、人生は矛盾ばかりだから深くは考えない。何事も軽率ぐらいでちょうどいい。会いたい人は片手で収まるくらいがちょうどいい。世の中のほとんどの人は嬉しいけど悲しいし、楽しいけど切ないはず。そういう終わりのないどうしようもない話を終電を逃した後の少し騒がしい喫茶店であなたと話したかったなと思う。