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フリーライターの吐きだめ

本当みたいな嘘の話

どこにだって行けるような気がしてた。それは息をするようにごく自然で、私さえ私についていけないようなスピードだった。私たちの関係は恋人というよりもパートナーという感じで、時には親友として肩を組みあって音楽フェスへ出掛けたし、時には彼氏彼女として映画館でこっそりキスをしたりした。そんな関係性が変わってしまうことは私も彼も知らなかった。

こんな言い回しをしているとまるで他人事のようで笑えてくる。でも、正真正銘、私の身に起きていることだ。しかもわりと一方的な私の意思の切り替えが関係性を変えた。そう言われて当然だし、少し言い返したい気持ちもあるけど飲み込めるほどに私も私の意思の変化が大きいと自覚してる。

電車に揺られながら何度も涙がでそうになって、その度に深く息をして感情を堪えた。なぜと聞かれても謝ることしか出来ない、情けないけど正解が分からない。謝ることが卑怯なのは重々承知の上で、それでもごめんなさいと身を切って祈るように絞り出すしかない。謝られたら何も言えないじゃないといつかの失恋した私自身がつぶやいた夜が今は憎い。

私たちは基本的に仲が良かったけど、頻繁に喧嘩もして傷だらけになった。消し去りたい過去を全て知りたいときかない彼に打ち明けた事実は二度も私を殺した。触れられることに耐えられなくて、そういう行為に対しての嫌悪感で夜中にひとり嘔吐したりもした。そのほかにも思い出すと消えない傷だらけで、そんな日の夜の気分は最低だった。

それでもいっしょにいた日々を消し去りたいとは思わない。確かに愛があったと思えるのはどうしてだろう。思い出を美化したいのか、過去を認めたいのか、素直に幸せな日々があった事実がかけがえないからなのか。すべて本当で、すべて嘘かもしれないけど、ただ今とてつもなく悲しいのは本当だ。どうしてこんなに悲しいんだろう。ほろ酔いなんか飲んだところでちっとも酔いやしない。

当たり前みたいに繋がり続けると思っていたけど、当たり前なんて当たり前にないんだな。日々は続くし、過去は変えられない。もうすぐ給料日だし、もうすぐボーナスだし、もうすぐ誕生日だし、まあいいや。