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フリーライターの吐きだめ

梅水晶

朝早くに玄関の扉が開く音がした。

ねぼけた頭が恐怖ですこし覚醒しかけたけど、チャリチャリと鍵がぶつかる音と聞き慣れた足音がしてすぐにまた頭に靄がかかる。今夜まで帰らないはずの人の帰宅だ。ただいまとベッドが沈んで、おかえりと手を伸ばす。どうやら予定を勘違いしていたみたいでポンコツ案件だった、嘆いている彼をみるのは何度目だろう。可哀想だけど、可笑しくて笑ってしまった。

前回のデートからハマったのか「朝マック食べない?」としっぽを振られた。家に届くなら食べたいとシーツにくるまりながら答える。じゃあ Uber EatsにしようとiPhoneで朝食を調達することになって心が踊る。朝マックを自宅で食べるなんて、なんて贅沢なんだろう。エッグマックマフィンひと筋のわたしが、浮かれてソーセージエッグマックマフィンを頼んでしまった。

きれいに平らげてからは同じベットで寝転んで、いつもなら昨夜話してたことを話す。そういえば、わたし達はよく話す。同じ家を出て同じ家に帰るのに、カフェに入れば久しぶりに会った友人かのようなテンションになるから不思議だ。猫が家にやってくればきっと猫の話ばかりするんだろうな。

さっとシャワーを浴びて支度していると家を出るまでの時間があまりないことに気付く。まあなんとかなるでしょとのんびりマスカラを塗っていると、いつも思うけどいったいどこからその余裕がでてくるんですかと呆れられて「もしや怒られている?」と聞くと、「もしや怒っている」との返答。マイペースが過ぎるのは悪いことらしい、まあいっか。

向かうは下北沢で、無印良品でいっしょに働いていた頃の先輩と久しぶりにお茶することになっていた。(この先輩は男運が皆無なので幸うす先輩と呼ぶことにする、ちなみに以前のブログにも登場済みです)久しぶりにきた下北沢はわたしの知っている下北沢とは随分と変わっていて、まるで違う駅になっていた。改札の向こうで「まほー」と口パクで呼ぶ先輩は相変わらず愛しい。近況報告をしつつ、叶わない恋をしたがりの先輩は愛すべきバカだ。1時間くらい経ってから先輩のiPhoneに着信があった。どうやら予約していたネイルサロンからの着信で、先輩が予約時間を勘違いしていたことが発覚。慌ててアイスラテを飲み干す先輩はそそっかしくて嵐のように去っていった。

それからは作業をするためのカフェをひとりで散策。中村佳穂のyou may they! がちょうど終わったタイミングで「まほちゃん!」と声をかけれて振り返ると、めずらしい人がいて驚いた。日が落ちてからしか会ったことのないその人と日曜の昼下がりに、偶然ばったり会うなんて「やっぱり!」と笑われてイヤフォンを外した。よく分かったねと笑いかけると匂いでわかったと自慢気にいわれて、人違いだったらどうするんだよと思ったけど、疑うことを知らず声をかけるその素直さが眩しかった。

いつもはお酒を飲むところだけどコーヒーを飲みながら少し作業をして、いつも通りの空気でたわいもない話をするのは新鮮だった。なんか上手く言葉にできないけど、その感じがすごくよくて、ああ、私たちってめちゃくちゃ友達だったんだなと思って嬉しくなった。

しばらくして店を出てからは脱毛と美容院の完全なる美容スケジュール。日曜、新宿は人が多すぎる。途中暑すぎてユニクロのTシャツを買って着替えたりした。

脱毛のお姉さんとは女性の毛に対する世間の厳しい目についてブチ切れ合った。なんで女だけこんなに毛を気にしなきゃいけないんだよと怒りながら脱毛をしてもらうのはなかなか斬新だった。終わったあとはアイスティーとクッキーが用意されていて、まじで脱毛は仕事なんだなと思ったし、わたしはこういうサロンがすきだとあらためて思った。

最近通い始めた美容室は前回担当してもらった人を引き続き指名することにした。技術が確かだし、温度感も距離感もちょうどいい。なんか話もめちゃくちゃ合ってしまってお客様から友達に昇格してしまった。明るくなった髪にバイオレットとカーキアッシュを足してなんかいい感じの柔らかなベージュにしてもらった。またしても良いトリートメントを貰ってしまって嬉しいかぎり。近いうちに中野の焼き鳥屋でシリアルキラーの話をすることになった。

 

帰りの電車は日曜だから少しだけ空いてる。改札にはぺたんこの靴を持ってわたしを待つ人がいる。また少しだけ靴ずれしてしまった。