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フリーライターの吐きだめ

ポラリス

 

上野の事務所で泊まるのは初めてだった。

3階建てのそこは、打ちっ放しの壁が冷たくて備え付けの間接照明がえっちだ。敷かれた布団は柔らかくて無印良品のグレーのカバーが掛かっていた。

お風呂から上がってそこに寝転がると思っていたよりも肌触りがよくて、すぐに瞼が重くなる。1階から聞こえる段ボールをまとめる音を聞きながら、帰り道に買った梨を食べた。今年初の梨は、甘く瑞々しい。

翌朝は高い天井から降り注ぐ強い陽射しで起きた。夏だから日の出が早い。眠い目を擦りながら、地域のラジオ体操に参加してた時のことを少し思い出した。

8月に入って2回目の休みは、休みだというのに会社へ行かなければいけなかった。会社へ近いから事務所へ泊まったのだけど、それでも朝から憂鬱だった。少し早めに事務所を出て、駅前のベローチェでロイヤルミルクティーを飲んだ。不思議な味がした。嫌いじゃなかった。

青山一丁目に着くまで、過去のトラウマに着いて話したりした。というか、当てられたりして、無意識のうちにトラウマになってることってあるんだなと感心した。私は私が思うよりずっと臆病な人間だ。

会社での滞在は僅か5分程度、預かった資料を置きにまた一旦事務所へ帰った。夏の陽射しは容赦がなくて、歩いていて軽く目眩がする。白い肌が焼けるように痛くて体力をかなり消耗した。

事務所で少し休んだ後は、お昼にたいめいけんのオムライスを食べて、美術館で恐竜展を楽しんで、あんみつのみはしでお茶をした。

それから、上野のTOHOで天気の子を観た。Lサイズのカルピスが想像以上に大きくて、ちょっと大きかったかなと笑う人の愛だと思った。

映画館を出ると外はようやく暗くなっていて、アスファルトからの熱は続いていたけど、吹く風は少し涼しくなっていた。

事務所の荷物を持って、今度は家へ向かう。電車の中で、中旬の旅行の計画を立てていたら交通費がバカみたいに高くて笑ってしまった。早いうちに案を練り直さないと。

夕食はご近所さんのスタンディング食堂へ、(行きすぎて、すでに何度もブログに登場している)氷で楽しむスパークリングワインが爽やかでついつい飲み過ぎてしまった。お通しのパテと「ホエー豚と夏野菜のグリル」とかいう新メニューがめちゃくちゃ美味しくて幸せだった。

1日ぶりの自宅はやっぱり安心する。さすがにヘトヘトで、散らかしたままでもいい?と聞くといいよと優しい声がして安心した。シャワーを浴びて、髪を乾かして、冷たいシーツに横たわるといつもの良い香りと散らかった部屋があって、なんだかすごく全部を大切にしようと思った。